教員退職後、画塾を始めて10年、難攻不落の中学生定番の『天賞』に風穴を開けられるのではないかと初めて思った作品。その作品の見事さを少し解説したいと思います。
水墨画を連想させます。
黒が多く濃淡があることがそう連想させるのでしょう。
まず構図
大きい構図です、「大きさ」とは一部を大きく描いたり、大きすぎてはみ出し息苦しいものとは違います。二匹のコイが対角線で交わっています。対角線で交わる構図がすごい。
特に上の口を大きく開けたコイ、このコイが主役です。
この主役のコイは頭部が目立ちますが、下のコイの頭部は控えめです。
このさじ加減が見事。
絵具の足し算と引き算
多くの人は絵具を足します。
足して足して・・・どんどん形と鮮やかさが失われていきます。
足し引きができる人は薄い色を足していきます。
重ね塗りですね。
常日頃画塾でも子どもたちに伝え、必要なときは個人指導もしますが、なかなかマスターしてくれません。
「壊せ汚せ、シミをつけろ」は数名の子どもがマスターして最後の仕上げでよく使ってくれます。
みはるちゃんは基本の基である「濃く塗る」ができていますので、口を開けたコイのヒゲを濃い白で塗りましたが、それが強すぎて違和感がありました。
そこで水の付いた筆で一気にこすり削り取り、ハンドペーパーで拭きました。
削り取ったコイの口を見ると偶然ですが美しくなんとも言えぬ口になっています。
「このコイの口は絶対に触らないよう」と、みはるちゃんに伝えたほどです。
その後もみはるちゃんはコイの背中と水面を削り取ったり、削り取った後に付け足したりして仕上げました。
ほとんどの人が足すことばかりしかできない中、絵具を足すこと、引くことを見事にやりとげています。
関心を示すことが大切ですね。
僕が筆で直接教えることをよく真似をしようとします。
ここがポイントのように思えます。
人の技法を盗むこと。
みはるちゃんは僕がしたことを真似して盗もうとしています。